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認知症の不動産売買で注意点は何か?意思能力や制度選択の流れも紹介

正木屋の不動産知識【売買編】

倉澤 明子

筆者 倉澤 明子

不動産キャリア18年

賃貸物件を中心にご案内しております、倉澤です。初めてのお部屋探しでも安心していただけるよう、丁寧な対応を心がけています。

高齢化が進む現代社会で、「親が認知症になった場合、不動産をどう売却するのか」と悩むご家庭が増えています。認知症になると本当に売買はできなくなるのか、また、トラブルを防ぐためにはどういった点に注意すべきなのでしょうか。この記事では、「認知症 不動産売買 注意点」をテーマに、不動産売却の際に気を付けたい法律的なポイントや制度の活用法など、これから不動産売却を検討する方にも分かりやすく詳しく解説します。不安や疑問を解消し、スムーズな手続きを進めるための知識を身につけましょう。


認知症と不動産売買における「意思能力」の重要性

不動産売買にあたっては、まず名義人本人に「意思能力」があるかどうかが極めて重要です。意思能力とは、自分が何をしているか、その行為の結果を理解できる能力を指します。不動産売買契約は法律行為であるため、本人に意思能力がないと契約は無効となります。たとえば、民法第3条の2では、意思表示時に意思能力を欠く場合は法律行為が無効と定められています。

そのため、「認知症だから一律に売却できない」というわけではありません。認知症の診断を受けていても、内容を理解し意思判断できる場合には契約は有効とされます。これは医学的判断や実際の理解・判断力に基づいて、個別に判断される点です。

判断能力の有無を判断する際には、医師による認知機能検査(例:MMSEやHDS‑R)や主治医意見書、診断書などの客観的資料が重要です。これらは、不動産業者や司法書士、さらには将来の無効主張に備えるため、意思能力を証明する証拠として活用されます。

項目内容重要性
意思能力契約行為を理解し判断する力契約の有効性を左右する
診断書・認知機能検査MMSE・HDS‑R・主治医意見書など判断能力の根拠となる資料
契約の有効性判断認知症でも理解できる場合は有効個別判断が必要

以上のように、不動産売買では「認知症=売れない」と単純に判断せず、「意思能力の有無」によって可否が分かれます。判断能力の有無を明確に示すために、医師の診断書や検査結果などの客観的資料を用意することが、安心して契約を進める上で必須です。


成年後見制度の種類と不動産売却への適用方法

認知症の方の不動産売却にあたっては、「成年後見制度」を活用することで、本人の意思能力の有無に応じた適切な手続きが可能になります。

まず、成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な本人の代わりに家庭裁判所が成年後見人等を選任する仕組みで、「後見」「保佐」「補助」の3段階に分かれ、それぞれ代理権や同意権・取消権の範囲が異なります(例:後見人には広範な代理権が与えられ、居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要)。一方、任意後見制度はまだ十分な判断能力があるうちに将来を見据えて公正証書で後見人と内容を定めておく契約で、判断能力の低下後にその内容に沿って支援が開始されます。

以下では、両制度の特徴と不動産売却への適用の流れをまとめています。

制度名特徴不動産売却時の流れ
法定後見制度 判断能力低下後に家庭裁判所が後見人等を選任。後見/保佐/補助の区分あり 家庭裁判所へ申立→後見人選任→居住用は裁判所許可を得て売却(裁判所許可が不要な場合もあり)
任意後見制度 判断能力がある時に本人が後見人や支援内容を決め、公正証書で契約 判断能力低下後に家庭裁判所が監督人を選任→契約に基づき後見人が売却支援

法定後見制度では、家庭裁判所への申し立て時に診断書や鑑定などの資料が必要となり、申立手数料や登記費用、郵送費、鑑定料などがかかります。審判後、後見人が選任されてから不動産会社との媒介契約や売買手続き、居住用不動産の場合は裁判所の許可取得を経て売却が進みます。所要期間はおおむね3~6か月程度です。

任意後見制度では、本人の判断能力が残っている段階で契約を結ぶため、売却時にスムーズな対応が期待できますが、公正証書作成費用や家庭裁判所による監督の手配が必要です。



家族信託を活用した不動産管理と売却の手法

家族信託とは、所有者(親など)が元気なうちに信頼できる子どもや親族(受託者)に、不動産の管理や売却などの権限をあらかじめ託す仕組みです。信託契約によって「名義」は受託者に移りますが、「財産権」は所有者に残り、贈与税や不動産取得税の課税が生じないケースが多いことが特徴です。また、信託契約に「不動産の処分」の権限を盛り込むことで、受託者が認知症の発症後でも不動産の売却が可能となります。これにより不動産が「凍結」されず、生活の支援資金として活用できます。信託の仕組みにより名義と財産権が分離され、売却代金も受託者が管理し、受益者に必要に応じて活用できる体制が整います。なお、信託登記の実務には司法書士の専門的支援が重要です。

項目 概要 ポイント
家族信託とは 所有者の名義を受託者に移し、財産権を保持しつつ管理権を移譲する制度 贈与税・不動産取得税の非課税メリットあり
認知症発生後の売却 受託者が処分権限を持っていれば、売却可能 信託契約書と登記が整っていれば“凍結”を回避
登記・本人確認 所有権移転登記と信託登記を法務局で行う必要あり 司法書士による登記申請と本人確認が重要

上表のように、家族信託では「所有と名義の分離」によって、不動産売却がスムーズかつ確実に行える点が大きなメリットです。信託財産については、信託登記が法律上必須であり、所有権移転登記とあわせて法務局へ申請する必要があります。申請には登記申請書、固定資産評価証明書、登記済証・登記識別情報、信託契約書、委託者・受託者の本人確認書類、委託者の印鑑証明書などが必要であり、専門家である司法書士に依頼することが実務上一般的です。

また、売却後の手続としては、信託財産であった不動産の所有権移転および信託抹消登記を同時に行い、売買代金は信託専用の口座で管理され、受益者の生活資金などとして使用されます。司法書士は登記手続きのほか、決済場での本人確認・意思確認も担当し、受託者が信託契約で定められた権限に基づき行動しているかを確認します。このように、家族信託には認知症の予防策としての合理的かつ柔軟な手法としての価値があり、不動産を適切に管理・活用したい方にとって有効な選択肢となります。

認知症による共有不動産の売却時の注意点

共有名義の不動産を売却する際には、民法上、共有者全員の合意が不可欠です。たとえ所有割合が多少であっても、一人でも同意が得られない場合は、売却自体が成立できません。そのため、共有者の一人が認知症により意思能力を欠いていると判断されると、売却契約そのものが無効になるリスクが高まります。民法第251条の規定に基づき、変更行為には全員の同意が必要です 。

次に、共有者の一人が認知症で意思能力が不十分と判断された場合、たとえ委任状を用意していたとしても、その効力が認められず、契約が無効化される可能性があります。委任契約自体が意思能力を要する法律行為であり、能力がないと判断されれば無効とされるためです 。

こうした状況においては、成年後見制度の活用が有効な解決策になります。特に、既に認知症と診断され同意が得られない共有者がいる場合には、家庭裁判所に法定後見人の選任を申し立て、後見人に売却の同意や手続きを委ねることが必要です。ただし、売却が本人の利益に資すると家庭裁判所に判断されなければ許可されない点には注意が必要です 。

以下に、これらの注意点を整理した表を示します。

注意点 具体的な内容 対処方法
全員の同意が必要 共有者の一人でも反対・無効と判断された場合、売却不可 家庭裁判所を経た後見人選任など制度的対応
委任状のリスク 認知症状態では委任契約が無効となる可能性 法的に有効な後見制度を利用する
制度の活用 成年後見制度(法定後見・任意後見)の選択と申立ての要否 家庭裁判所で後見人を選任、許可取得が必要

以上のように、共有名義不動産の売却では、認知症を患う共有者の意思能力の有無が大きな問題となります。無効リスクを避けるためにも、成年後見制度を適切に活用し、安全かつ法的に確実な売却手続きを進めることが重要です。

まとめ

認知症のある方が不動産を売却する際には、その方の「意思能力」が法律上とても重要なポイントとなります。判断能力が不足すると、売買契約自体が無効になる可能性があるため、医師による診断書など客観的な証拠が求められます。成年後見制度や家族信託を活用することで、適切な管理と売却手続きを進めることが可能になりますが、それぞれ準備や手続きの流れが異なります。また、共有不動産の場合は、共有者の判断能力にも注意が必要です。制度の選択や手続きを正しく行うことで、トラブルを防ぎ、大切な資産を安心して扱うことができます。

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