
道路拡張時の用地買収はどんな流れ?手続きや注意点もまとめて解説
「道路拡張による用地買収」と聞くと、多くの方が「どんな流れで自分の土地が対象になるのか」「補償はどうなるのか」と不安や疑問を感じるのではないでしょうか。
この記事では、道路拡張事業が開始されてから用地取得、補償の仕組み、契約から工事開始までの一連の流れをわかりやすく解説します。
用地買収のポイントを知ることで、将来の準備や安心につなげましょう。

事業開始から用地測量までの流れ(道路拡張による用地買収についての初期プロセス)
道路拡張に伴う用地買収は、まず行政が整備路線を決定し、地権者や地域住民に向けた説明会を開催するところから始まります。
豊川市の資料では、事業決定と説明会は初年度に行われるとされています。
その後、関係する土地について用地幅杭を設置し、測量を実施して将来の道路幅を示します。
同様に、境界確認や仮杭設置も行い、対象範囲を明確にします。
また、和歌山市の手順では、境界を現地で立会確認した上で測量し、確定された図面を作成する流れが示されています。
以下の表では、初動プロセスの流れを整理しました。
| ステップ | 内容 | 実施時期 |
|---|---|---|
| 1. 事業決定・説明会 | 整備路線の決定と地権者・住民への説明 | 初年度(1年目) |
| 2. 幅杭設置・境界確認 | 仮杭設置と境界立会確認、測量の実施 | 初年度(1年目) |
| 3. 測量図の作成 | 確定した境界・面積に基づく図面作成 | 初年度(1年目) |
このように事業開始から用地測量までのプロセスは、計画の透明性と測量精度の確保を重視しつつ、地権者の理解と協力を得る構成です。
行政と地域の信頼関係を築きながら進められます。
補償内容の決定と協議(道路拡張による用地買収についての補償プロセス)
道路拡張に伴う用地買収では、まず土地価格の評価が重要なステップとなります。
具体的には、不動産鑑定士による鑑定評価や地価公示・地価調査、近隣の取引事例などを参考に、個々の土地に対し適正かつ公平な価格を算定します。
このような評価基準に基づくことで、透明性と納得感の高い基準が担保されます。
次に、土地上に建物・塀・樹木などがある場合は、それらの物件を調査し補償額を算出します。
項目としては、建物の構造・規模・材質、立木や工作物の数量などを細かく調査し、移転や除去にかかる費用を「損失補償基準」に沿って算定します。
その上で、権利者の方と個別協議を行い、補償内容として提示します。
交渉の場では、提示した補償価格の根拠や条件を具体的に説明し、ご納得いただくよう丁寧に進めます。
協議後、両者の合意が得られれば正式な契約へと進行します。
| ステップ | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 土地価格評価 | 鑑定評価、地価公示、事例調査 | 公正な市場価格の基準 |
| 物件調査・補償額算定 | 建物・塀・樹木などの調査 | 移転・除去費用の具体的算定 |
| 個別協議・契約 | 補償内容を提示し合意形成 | 双方の理解と納得を重視 |
このように、土地価格と物件の両面から補償額を明らかにし、権利者との丁寧な協議を経て合意へと導くことで、公平で円滑な用地取得が実現します。
契約締結から引渡しまでの流れ(道路拡張による用地買収についての契約・移転プロセス)
道路拡張に伴う用地買収では、契約締結から引渡しまでの手続きは、行政側と権利者間で明確かつ丁寧に進められます。
多くの自治体に共通する流れをご紹介します。
| ステップ | 内容 | 流れのポイント |
|---|---|---|
| 契約締結 | 契約書への署名・押印、登記承諾書の提出 | 印鑑証明・実印・口座情報など必要書類を準備いただきます |
| 所有権移転登記と分筆(必要時) | 行政が登記手続きを代行 | 抵当権などの抹消対応が必要な場合もあります |
| 建物・工作物の移転と土地の引渡し | 期限内に移転・撤去を実施 | 引渡し確認後、補償金の支払が開始されます |
具体的には、まず契約締結にあたって、土地売買契約書への署名・押印とともに、登記承諾書や印鑑証明書、補償金支払先の口座情報などを提出していただきます(例:岐阜市)です。
また、徳島県では、一筆の土地の一部を取得する場合、必要に応じて分筆登記も行政が行うケースがあります。
その後、所有権移転登記は行政側が法務局に提出する形で手続きを行います。抵当権や地上権などが設定されている場合は、権利者が抹消登記を行う必要がありますが、その目的土地の一部であれば、抹消の承諾書を得た上で行政が手続きすることも可能です 。
引渡しに際しては、建物や工作物、立木等についてご契約の履行期限内に移転・撤去を完了していただき、その後土地を行政に引き渡していただきます。
そして、引渡しと登記が完了した後に補償金(用地代金)が口座振込で支払われます。
必要に応じて、補償金の一部を前払いする制度がある自治体もあります(松戸市、姫路市など)です。
このように契約締結から引渡しまでの流れは、必要書類の準備から登記、引渡し確認、補償金支払いへと、一連のステップが明確に定められており、スムーズかつ安心して進められるよう配慮されています。
:工事開始までの準備と実施(道路拡張による用地買収についての整備開始準備)
用地取得が完了した後は、いよいよ工事に向けた着実な準備が進行します。
まず、取得した土地に対して仮の整備や暫定措置を行うことが多く、これは事業区域の安全性確保や近隣への影響を最小限に抑えるために重要なステップです。
たとえば、用地取得後すぐに工事が始まるわけではなく、必要に応じて仮囲いや応急的な整備が実施されることもあります。
地域や自治体によっては、取得完了後すぐに工事に取りかかるケースもあります。
豊川市の例では、用地買収を完了し次第、3年目に本格的な道路拡幅工事に着手する流れとなっています。
これは、用地取得状況が工事開始のタイミングを左右する典型的なパターンです。
取得が円滑に進むほど工事開始も早まりますが、遅れが生じれば整備開始も遅延する仕組みです(例:豊川市)。
工事完了後は、最終検査を経たうえで道路の供用が開始されます。
刈谷市のケースでは、「工事施工」→「供用開始」という手順で進み、検査後に初めて通行可能となると明示しています。
これはまさに、工事開始から供用開始までを見通す流れとして理解できます。
以下に、取得完了後から道路使用開始までの主要なステップを表形式でわかりやすく整理しました。
| ステップ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 暫定整備・仮措置 | 応急的な整備や仮囲い等 | 安全確保・周辺影響軽減 |
| 本格工事開始 | 用地取得完了後に工事着手 | 道路拡幅の施工 |
| 完成検査・供用開始 | 完成後の検査を経て通行開始 | 安全な通行環境の提供 |
このように、用地取得が工事全体の進行に直結しており、取得がスムーズであれば整備も計画どおりに進みます。
逆に取得が遅れると、当然ですが工事や供用開始も後ろ倒しになってしまいます。
道路拡張プロジェクトでは、この「取得→整備開始→供用開始」という流れをしっかり把握し、タイムリーな事業推進が求められます。

まとめ
道路拡張による用地買収の流れは、事業計画の決定から始まり、説明会や用地測量、補償協議、契約の締結、引渡し、そして工事開始へと段階を追って進みます。どのプロセスも透明性と丁寧な説明が大切となり、土地所有者や地権者にとって疑問点があれば早めに相談することが安心につながります。流れを理解することで、余計な不安なく準備や次の対応ができるため、しっかりと知識を持って手続きを進めましょう。