
離婚時の不動産売却手続きは何から始める?流れや注意点を解説
離婚を考える際、不動産の売却は多くの方にとって大きな悩みの一つです。
「財産分与はどう進めたらよいのか」「手続きは何から始めればよいのか」といった疑問や不安も多いのではないでしょうか。
この記事では、離婚に伴う不動産売却の基本的な流れや注意点について、分かりやすく解説します。
大切な財産をスムーズに整理するために、まず押さえておきたい知識をまとめてご紹介します。
不動産が共有財産か特有財産かをまず確認する
離婚にあたって不動産を売却する場合、まず確認すべきはそれが「共有財産」か「特有財産」かという点です。
法律的には、婚姻前から持っていた不動産や相続・贈与によって得た不動産は「特有財産」として扱われ、原則として財産分与の対象になりません。
一方、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された不動産は「共有財産」として、分与対象となります(民法第762条)。
ただし、以下のような場合には注意が必要です。
婚姻後にローン返済や修繕費などが共有財産から支払われた場合、その部分については共有財産と判断される可能性があります。
また、特有財産とされる不動産が賃貸されて得られた収入についても、配偶者の協力があったと認められれば、分与の対象に含まれることがあります。
| 分類 | 具体例 | 財産分与の対象 |
|---|---|---|
| 特有財産 | 婚姻前に取得した不動産、相続や贈与で得た不動産 | 原則対象外(証明必要) |
| 共有財産 | 婚姻中に夫婦で取得・維持した不動産 | 対象 |
| 混合型 | 婚姻前頭金+婚姻中ローン返済した不動産 | 一部は特有財産として除外可能 |
どちらに該当するかで、売却時の分配方針や手続きの進め方が変わります。
特有財産だと主張する場合には、その取得時期や資金の出所、配偶者の関与がなかったことを証明する責任がある点にも留意しましょう(立証責任は主張する側にあります)。

名義人・ローン残債・財産分与の請求期限を確認する
離婚に伴い不動産の売却を検討する際、まず最初に確認すべきは「だれが名義人か」という点です。
登記上の名義人でなければ売却の申込みはできません。
共有名義の場合は、相手の同意が必須です。具体的には、法務局で「登記事項証明書」を取得すると確実です。
次に重要なのは住宅ローンの残債の有無です。
売却代金でローンが完済できる「アンダーローン」か、完済に足りない「オーバーローン」かで対応策が異なります。
オーバーローンの場合は、自己資金の補填や、金融機関との協議による任意売却などの選択肢があります。
さらには、財産分与の請求には「離婚成立から2年以内」という法定の期限があります。
この期限を過ぎると、原則として請求できなくなるため、早期の話し合いや必要に応じて家庭裁判所への調停申し立てが求められます。
以下は、上記のポイントをまとめた表です。
| 確認項目 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 名義人 | 登記上の所有者 共有名義の場合は全員の同意が必要 | 共有相手の同意がないと売却不可 |
| ローン残債 | 残高証明等で確認 アンダー/オーバーローンの判断 | オーバーの場合は追加費用や任意売却の検討が必要 |
| 財産分与の期限 | 離婚成立から2年以内に請求 | 期限を過ぎると請求権が消失 |
これらの要素は相互に関連しており、名義の確認やローン残高の状況によって財産分与の方法や売却の可否が左右されます。
早めに状況を整理し、必要に応じて専門家に相談しながら進めるのが安心です。

売却方法(仲介・買取・任意売却)と流れを理解する
離婚に伴う不動産売却では、売却方法ごとの特徴をしっかり押さえることが大切です。
まずは一般的な仲介による売却。購入希望者を仲介する不動産会社を通じて広告や内覧を行い、市場価格に近い金額で売れる可能性があります。
ただし、売却まで数ヶ月かかることもあり、スケジュールに余裕が必要です。
売却活動中も、案内対応や書類準備など手間がかかりやすい点に注意してください。
次に、不動産会社による買取。こちらは売却のスピード重視の方に向いており、数週間以内に現金化できる点が大きな魅力です。
ただし、買取価格は市場価格より低めになる傾向がありますので、資金ニーズとの兼ね合いをよくご検討ください。
最後に、オーバーローン(売却価格より住宅ローン残債が上回る状態)の場合に利用される任意売却。
金融機関と調整のうえ、一般売却として売りに出すことで、競売より高値で売却できる可能性があります。
また、引っ越し費用を売却代金から捻出できることもあります。
ただし、金融機関と連帯保証人の同意を得る必要があり、信用情報に履歴が残る点や、手続きに時間と手間がかかる点は理解しておくべき重要なポイントです。
以下に、売却方法ごとの比較をまとめた表をご用意しました。
| 売却方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 仲介 | 市場価格に近い金額で売却可能。ただし売却まで時間と手間がかかる。 | 相場での売却と時間の余裕がある場合 |
| 買取 | 短期間で現金化できるが、価格はやや低め。 | 早期に売却したい、資金化を急ぐ場合 |
| 任意売却 | ローンが完済できない場合でも売却可能。競売より高値が期待でき、引っ越し費用の捻出も可。ただし金融機関や保証人の同意が必要で手続きが複雑。 | オーバーローン状態で、通常売却が難しい場合 |
このように、売却方法それぞれに一長一短があります。
売却スピードを重視するのか、なるべく高値で売りたいのか、残債の状況によって選択肢が変わってきます。
離婚という人生の節目だからこそ、ご自身にとって最適な方法を慎重に選びましょう。

売却後の手続きと税金・契約の留意事項
離婚に伴って不動産を売却したあとは、いくつかの重要な手続きと税金の対応があります。
まずは登記とローン関連の手続きを確認しましょう。
売却が済んだら、所有権移転登記とともに抵当権抹消登記が必要になります。
特に住宅ローンが残っていた場合、金融機関から発行される「抵当権解除証書」などの書類を用意し、法務局で登記申請を行います。
登録免許税は1物件あたり約千円と比較的少額ですが、住所や氏名に変更がある場合には、変更登記もあわせて行う必要があります。
また、必要書類には有効期限のあるものがありますので、速やかに準備するようにしましょう。
司法書士に依頼すれば手間を省けますが、費用がかかりますのでご自身の状況に応じた判断が大切です。
| 項目 | 概要 | 留意点 |
|---|---|---|
| 登記 | 所有権移転および抵当権抹消登記 | 金融機関の書類が必要・住所氏名変更に注意 |
| 費用 | 登録免許税:約1,000円/件 司法書士報酬:数千円~ | 自分で手続きすれば費用を抑えられますが、専門家依頼により安心感も高まります |
| 書類 | 解除証書、委任状、登記識別情報など | 紛失時は再発行が必要で、時間と手間がかかります |
次に税金面では、「居住用財産の譲渡に係る三千万円特別控除」が活用できます。
売却した不動産が居住用であり、配偶者以外への売却である場合、この控除を受けることが可能です。
ただし、過去3年以内に同様の控除や買い替え特例を受けていた場合は適用外となることがあります。
また、別荘や店舗部分がある場合は居住部分に限定されますので注意が必要です。
確定申告が必須で、譲渡所得の内訳書や住民票などの書類を添付する必要があります。
さらに、売却後の財産分与については、公正証書などの書面で明確に合意内容を記しておくことが重要です。
これにより、後のトラブル予防となり、安心して手続きを進めることができます。
まとめ
離婚に伴う不動産売却は、財産の種類や名義、ローン状況、請求期限など事前に押さえておくべき重要なポイントが多くあります。
手続きを正しく進めることで、トラブルなく円滑に売却を進めることができます。
また、売却方法やその後に必要な契約・税金の知識も理解しておくことで、安心して新たな生活を迎えられるでしょう。
不安や疑問がある方は、専門的な知識を持つ当社にお気軽にご相談ください。納得のできる売却を一緒に目指しましょう。